前の記事では、市町村「財政力指数」について全体の傾向をまとめました。この記事では、市町村ごとのバラツキの大きい「基準財政需要額」について、どのように分散しているかをまとめています。
基準財政需要額や財政力指数についての概要はこの記事をごらんください。
人口1人当たり基準財政需要額が最も高い市町村は
鹿児島県十島村(191万9,909円;人口689人)
次いで10番目までの市町村を挙げると以下のようになります。
鹿児島県三島村(183万3,024円;373人)
奈良県野迫川村(174万7,015円;397人)
奈良県北山村(161万5,532円;500人)
北海道音威子府村(157万2,984円;763人)
北海道幌加内町(146万6,557円;1,508人)
東京都青ヶ島村(141万5,792円;159人)
福島県桧枝岐村(141万5円;557人)
高知県大川村(138万1,098円;408人)
北海道中川町(131万2,923円;1,522人)
これらの市町村の財政力指数は、1人当たり固定資産税の大きい桧枝岐村(0.36)を除き0.1前後となっています。
基準財政需要額は人口1,000人未満の市町村で特に高いことがわかります。また、上位10市町村はいずれも離島や山間部などのへき地に存在します。
基準財政需要額のうち、道路への土木費など人口に比例しない算定部分や、少ない人口で支える教育費(教員数)による負担が大きいと想定されます。
単純に計算すると、最も基準財政需要額が高い十島村の村民は、下で紹介する最も低い流山市民の約16倍(1人当たり)税金を納めなければ同じ財政力指数にならないことになります。
人口1人当たり基準財政需要額が最も低い市町村は
千葉県流山市(124,212円)
次いで10番目までの市町村を挙げると以下のようになります。
埼玉県上尾市(124,270円)
神奈川県茅ケ崎市(125,934円)
千葉県八千代市(126,006円)
千葉県市川市(127,249円)
千葉県佐倉市(127,465円)
埼玉県越谷市(128,812円)
東京都調布市(128,897円)
千葉県四街道市(129,027円)
埼玉県所沢市(129,247円)
東京近郊の市町村がくまなく上位を占めます。これらの市町村の財政力指数は0.82(四街道市)~1.22(調布市)の間にあり、均衡財政に近いといえます。
首都圏以外では17位愛知県大治町(131,726円)が初めて現れ、次いで18位福岡県春日市(131,736円)、19位愛知県尾張旭市(131,883円)、24位宮城県富谷市(132,726円)などが基準財政需要額の低い市町村です。
いずれも位置的には名古屋、福岡、仙台の各政令市に隣接しています。
では、そもそも地域の中心である政令指定都市(政令市)の基準財政需要額はどうなっているかを次に見ていきます。
政令市20市の1人当たり基準財政需要額の平均は
199,215円
全市町村の順位に直すと563位となり、福島県西郷村(199,085円)と福岡県福岡市(199,085円)の間になります。
人口の多さが直ちに基準財政需要額を下げるわけではないことがわかります。
政令市で1人当たり基準財政需要額が最も高い市は
大阪府大阪市(230,254円)
全市町村の順位に直すと大阪市は784位です。
次いで、福岡県北九州市(217,451円)、新潟県新潟市(216,212円)、愛知県名古屋市(214,368円)、兵庫県神戸市(209,928円)などが基準財政需要額の高い政令市です。
大阪市は政令市の中で横浜市(375万人)に次いで人口が多く(271万人)、また市域も4番目に狭く(225㎢)、最も広い浜松市(1,558㎢)の7分の1以下です。
都市化が進んでおり、広大な山間部を市域に抱えているわけでもありませんが、基準財政需要額は高くなっています。
政令市で1人当たり基準財政需要額が最も低い市は
神奈川県相模原市(174,510円)
次いで、埼玉県さいたま市(176,732円)、千葉県千葉市(188,140円)、神奈川県横浜市(189,605円)、大阪府堺市(190,773円)、神奈川県川崎市(191,562円)などが基準財政需要額の低い政令市です。
政令市の間で比べても、中心地よりもベッドタウン的な都市が低い傾向にあることがわかります。