国税庁では、酒税の取り締まり等のために、全国の酒類販売業者に対して毎年販売数量の報告を義務付けています。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/qa/10/38.htm
そのため、国税庁資料に基づき、酒類の販売数量の地域性を全数ベースで確認することが可能です。
酒税の課税数量や全体の数値についてはこちらをご覧ください。
以下では、成年人口1人当たりの年間清酒・合成清酒販売数量を見ていきます。総量を「成年人口1人当たり」に直すことで、販売量の地域性を確認することがねらいです。
※酒類販売数量は平成30年度の数値、成年人口は平成30年10月1日現在の推計人口です。
※販売数量は、「酒類卸売業許可」「酒類小売業許可」を受けている卸売業者および小売業者が報告します。
※居酒屋やレストランなど、酒類がその場で消費される施設は販売許可が不要のため、報告義務はありませんが、それらの飲食店に卸している卸売・小売業者が数量を報告するため、結果として全体の販売量には含まれます。
※一方、このデータは許可を受けた販売者の所在地に基づくため、オンライン販売等により他都道府県や海外で消費される分を除くことはできません。あくまで販売ベースでの値としてご確認ください。
成年人口1人当たり清酒販売数量
4.93リットル(以下ℓ)
清酒とは、日本酒のうち醸造工程を含むものであり、それを含まない「合成清酒」と区別されます。ここでは清酒のみの販売数量を挙げています。
これを1日当たりに直すと12.74mlとなり、1勺(約18ml)を少し下回る程度の量です。
47都道府県の平均は4.97ℓ、中央値は4.69ℓとなります。
成年1人当たり清酒販売量の最も多い地域
新潟県(10.53ℓ)
次いで多い地域は秋田県(8.60ℓ)、山形県(7.46ℓ)、富山県(7.35ℓ)、福島県(7.20ℓ)、石川県(6.89ℓ)となります。
清酒消費の多い地域は明確に北陸、東北に寄っています。
最も清酒消費の多い新潟県と、下記の最も少ない沖縄県では1人当たり消費量に10倍近くもの差があります。
成年1人あたり清酒販売量の最も少ない地域
沖縄県(1.09ℓ)
これは次いで少ない鹿児島県(1.13ℓ)とほぼ変わりません。同じ南九州の宮崎県(2.39ℓ)、熊本県(2.69ℓ)も顕著に低くなります。
なお、上記の南九州・沖縄4県に次いで低いのは愛知県(3.38ℓ)および神奈川県(3.51ℓ)埼玉県(3.88ℓ)千葉県(3.92ℓ)の南関東エリアの3県となります。
上記の南九州、沖縄4県は北九州4県(大分3.96ℓ、福岡4.02ℓ、長崎4.11ℓ、佐賀5.53ℓ)と比べてかなり低く、清酒に関しては、九州の南北で明確に文化的な違いがあると言えそうです。
また、東京都は5.53ℓとなり、隣県と比べて高い水準です。これは県外人口の消費量が比較的多いこと(逆に、千葉・埼玉・神奈川の消費量が低くなること)や、海外への土産品などの需要を含むからと考えられます。
成年1人当たり合成清酒販売数量
0.27ℓ
合成清酒とは、醸造を行わずに日本酒の風味を出している酒類のことです。製造費も税率も清酒に比べて安くなりますが、販売量は清酒の6%弱と、清酒に比べて大きくはありません。
47都道府県の平均は0.30ℓ、中央値は0.26ℓです。
成年1人当たり合成清酒販売量の多い地域
鳥取県(0.87ℓ)
次いで多い順に秋田県(0.56ℓ)、青森県(0.51ℓ)、新潟県(0.49ℓ)、山形県(0.46ℓ)、大分県(0.44ℓ)となっています。
清酒ほどの歴史はなくとも、合成清酒の製法は大正時代に確立した古いものであるため、地場で定着した銘柄があれば販売量が上がるものと考えられます。
また、清酒が飲まれる地域では合成清酒の販売量も高めになっていることがわかります。
成年1人当たり合成清酒販売量の少ない地域
鹿児島県(0.17ℓ)
次いで少ない順に埼玉県(0.16ℓ)、滋賀県(0.17ℓ)、沖縄県(0.18ℓ)、兵庫県・富山県・神奈川県(0.19ℓ)となります。
清酒の販売量が少ない地域では、合成清酒の販売量も少なくなる傾向があるようです。
もっとも清酒販売量の多い鳥取県と少ない鹿児島県では約5倍の開きがあります。清酒の10倍と比べると偏りは少なくなっています。