公共データ

住民1人当たり市町村税額と税目ごとの偏在性

ここでは、1人当たりの地方税額およびその税目別の地域性を見ていきたいと思います。市町村税全体については、こちらの記事をご覧ください。

市町村税の規模と内訳 市町村税の総額は 20兆1,313億円 「令和2年版地方財政白書」によると、平成30年度の全国市町村が徴収した市町村税の合...

ここからの数値は、引き続き 「平成30年度市町村別決算状況調」を基にしています。

全国市町村の住民1人当たり地方税額は

157,954円

※平成31年3月31日現在、東京都特別区を除く1,718市町村
※住民数(0歳以上の全人口)は平成31年1月1日現在の人口基本台帳による

これは市町村民税(個人分+法人分)、固定資産税、市町村たばこ税、都市計画税などの合計を住民基本台帳人口で割ったものです。

全市町村で平均すると、住民税や固定資産税、たばこ税をあわせ、住民1人当たり15万円超の地方税収入があることになります。

住民1人当たり地方税額が平均以上の市町村の数は

352(全1,718市町村の20.5%)

上記157,954円はあくまで平均値のため、上位にある少数の市町村が平均値を大幅にあげていることが考えられます。

実際に上の平均以上の地方税収入のある市町村は全体の2割です。

また、中央値は123,801円となります。

住民1人当たり地方税額が最も多い市町村は

北海道泊村(1,362,028円

次いで多いのは以下の市町村です。

群馬県上野村(1,275,930円)
愛知県飛島村(843,352円)
青森県六ケ所村(818,772円)
長野県南相木村(783,183円)
福島県桧枝岐村(778,039円)
山梨県山中湖村(693,193円)

法人村民税の割合も高い飛島村や山中湖村を除き、これらの市町村は固定資産税の市町村税に占める割合が9割を超えています。

住民1人当たり地方税額が最も少ない市町村は

福島県浪江町(38,000円

浪江町の税収は東日本大震災による減免措置等の影響もあるとみられます。次いで少ない市町村は、

鹿児島県伊仙町(47,093円)
青森県風間浦村(57,798円)
北海道上砂川町(60,391円)
大分県姫島村 (60,865円)
福岡県糸田町 (60,980円)
北海道歌志内市(62,463円)となっています。

最も多い北海道泊村と少ない福島県浪江町の1人当たり地方税額には約36倍の差があります。

全国の住民1人当たり固定資産税額は

66,468円

上記の金額には、企業や施設が納める固定資産税も含まれています。

住民1人当たり固定資産税額が平均以上の市町村数は

531(全1,718市町村の30.9%)

住民1人当たりで上記66,468円以上の固定資産税のある市町村は全体の約3割です。なお、中央値は57,211円です。

住民1人当たり固定資産税額が最も多い市町村は

北海道泊村
1,275,985円;人口1,652人・固定資産税21億793万円)

泊村の市町村税額の9割以上が固定資産税です。

次いで多いのは以下の市町村です。泊村を含め、地方税総額とほぼ同じ市町村が上位を占めています。

群馬県上野村 (1,235,139円;市町村税全体2位)
長野県東相木村 (734,819円;同5位)
福島県桧枝岐村 (721,905円;同6位)
青森県六ケ所村 (687,344円;同4位)
愛知県飛島村  (632,582円;同3位)
北海道京極町  (588,671円;同8位)

他の税目と異なり、固定資産税はダムなどの箱物からあがる比重が大きいので、人口が小さく、かつそれらの施設のある市町村は1人当たりの金額が大きい傾向がみられます。

住民1人当たり固定資産税額が最も少ない市町村は

福島県浪江町
9,399円;人口378人・固定資産税834万円)

次いで少ない6市町村を以下に挙げます。

鹿児島県伊仙町(15,571円)
北海道上砂川町(16,844円)
北海道歌志内市(17,318円)
沖縄県渡名喜村(22,061円)
奈良県明日香村(22,317円)
福島県葛尾村 (23,099円)

1人当たり固定資産税の最も多い泊村と最も少ない浪江町では約136倍の差があり、固定資産税はかなり偏在性の強い税目と言えそうです。

全国の住民1人当たり個人市町村税額は

60,198円

全国平均で見ると、1人当たりの個人市町村民税は固定資産税より1割程度少なくなります。

住民1人当たり個人市町村税額が平均以上の市町村の数は

180 (全国1,718市町村の10.5%

住民1人当たり6万198円以上の個人市町村税がある市町村は全体の1割となります。中央値は42,951円となります。

住民1人当たり個人市町村民税が最も多い市町村は

北海道猿払村
188,905円;人口2,745人・個人村民税5億1,632万円)

東京23区を入れた場合でも、猿払村は港区(28万2千円)、千代田区(25万2千円)、渋谷区(21万7千円)に次いで全国4位となります。

一方、猿払村は市町村税全体(258,535円)で見ると全市町村のうち58位です。

次いで多いのは以下の市町村です。
兵庫県芦屋市 (129,547円;市町村税全体78位)
東京都武蔵野市(120,696円;同43位)
神奈川県川崎市(108,698円;同81位)
東京都青ヶ島村(107,075円;同70位)
東京都小笠原村(106,300円;同166位)

1人当たりで見ると、個人市町村民税は固定資産税のように極端に高くならないため、個人税で上位の市町村でも全体の順位はそれほど高くなるわけではないようです。

猿払村は個人事業主である漁業世帯(第1次産業)が約3分の1と多く、本来法人税となる分が個人世帯収入となっているとも考えられます。一方、京阪神のベッドタウンを超える個人村民税収入を得られるのは、やはり元々の世帯所得の差によるものとみられます。

1人当たり個人市町村民税が最も少ない市町村は

福島県飯館村
13,557円;人口5,704人・個人村民税7,703万円)

飯館村は東日本大震災による避難地域に含まれており、次いで少ない福島県双葉町(14,138円)、浪江町(15,723円)とともに、減免措置の影響が大きいものともみられます。

続いて少ないのは以下の市町村になります。

鹿児島県伊仙町(18,690円)
沖縄県大宜味村(20,350円)
青森県深浦町 (20,842円)
鹿児島県天城町(21,637円)
青森県西目屋村(21,738円)
熊本県水上村 (21,900円)

福島県内を除けば、上記に挙がった市町村はいずれも離島または過疎市町村にあたります。1人当たり個人市町村民税の低い市町村は、高齢化による生産人口の減少が大きく影響しているとみられます。

また、最も1人当たり個人市町村民税の高い猿払村と(福島県内除く)最も低い伊仙町では、1人当たり個人町村民税に約14倍の差があります。

市町村税全体の最小・最大の幅が36倍であることを考えると、個人市町村民税は地域的偏在性の比較的小さい税目であるといえます。

全国の住民1人当たり法人市町村民税額は

14,627円

全国平均で見ると、法人市町村民税の額は固定資産税、個人市町村民税のだいたい4分の1程度です。

1人当たり法人市町村民税額が平均より多い市町村数は

277(全国1,718市町村の16.1%

中央値は8,020円です。

1人当たり法人市町村民税が最も多い市町村は

山梨県山中湖村
318,056円;人口5,817人・法人村民税18億5,013万円)

山中湖村は市町村税全体でも7位となります。

次いで多いのは以下の市町村です。

山梨県忍野村(165,645円;市町村税全体21位)
愛知県飛島村(131,898円;同3位)
滋賀県竜王町(102,558円;同32位)
大阪府田尻町(89,153円;同15位)
愛知県田原市(80,558円;同39位)
宮城県大和町(78,504円;同79位)

法人市町村民税が大きい市町村は、工場敷地などからの固定資産税も大きくなるため、市町村税全体の順位も高くなる傾向があります。

1人当たり法人市町村民税が最も少ない市町村は

福岡県赤村
1,174円;人口3,181人・法人市町村民税374万円)

次いで少ないのは以下の市町村です。

大分県姫島村 (1,298円)
熊本県球磨村 (1,366円)
奈良県三郷町 (1,506円)
鹿児島県伊仙町(1,573円)
奈良県御杖村 (1,579円)
青森県佐井村 (1,633円)

1人当たり法人市町村民税が小さい市町村は離島や山間部に多くなります。

最も多い山中湖村と最も少ない赤村では約271倍の差となります。法人市町村民税は、固定資産税以上に偏在性の強い税目であるといえます。

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