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市町村財政力指数のバラツキ

ここでは、市町村ごとの「財政力指数」について、その内訳と地域性を見ていきます。

北海道夕張市の財政破綻から平成の大合併が終わるころまでは、「財政力指数」という言葉はメディアに頻繁に登場しましたが、いまでは以前ほど聞かれなくなりました

財政力指数の内訳を詳しく見ていくことで、なぜそうなったか、理解を深めていきたいと思っています。

まず、財政力指数とは

この項は、総務省「地方税制度」に基づきます。

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/kouhu.html

財政力指数とは、市町村などの地方団体ごとに異なる収入や費用を統一基準で見られるようにするための指標です。

財政力指数は、市町村ごとに

「基準財政収入額」÷「基準財政費用額」)の過去3年平均

を算出します。過去の平均とするのは、年ごとの税収や費用の揺らぎを吸収するためです。

また、「基準財政収入額」ー「基準財政費用額」がマイナスになる場合は、その市町村の予算が不足していることを意味します。そのため、この差額は地方交付金の給付基準として用いられます。

「基準財政収入額」とは

ここに含まれる市町村の収入は、市町村民税や固定資産税、たばこ税などの地方税、軽自動車税やゴルフ場利用税などの交付金、譲与税などが含まれます。

一方、地方自治体が独自に課税するもの(法定外普通税)や、一部市町村が持つ入湯税、都市計画税などは含まれません。

これら税目の過去実績収入に基づいて見込額が算出され、基準税率を掛けたうえで基準財政収入額が算定されます。

「基準財政費用額」とは

収入と比べて、費用を測ることは難しいものです。市町村は、少なくとも一般財源分についての税金を自由に使うことができますが、それが無駄遣いか必要な経費かは、その市町村でなければわかりません。

そのため、費用については実績ベースで測るのではなく、「基準財政需要額」という全国一律の費用基準額を設けて、標準的に必要な費用を測っています。

基準財政費用額の算定

大きく、消防費、土木費、教育費、厚生費、産業経済費、総務費の6つの算定項目について、人口や面積などから必要経費(「測定単位」と呼ばれます)を割り出します。

※令和元年度では、特定の政策に紐づく費用として「地域の元気創造事業費」「人口減少等特別対策事業費」も含まれます。

これらの算定項目(「測定単位」)は、教育費や厚生費など、市町村人口で決まるもの(教職員数含む)もありますが、土木費における道路総延長や港の施設の大きさ、産業経済費における農林水産業の従事者数、総務費の面積など、人口によらない項目もあります。

この「測定単位」に全国一律の「単位費用」を掛け、その後人口密度や寒冷地など、経費に影響する部分の「各種補正」を掛けたものが基準財政需要額になります。

「各種補正」には、大都市や離島で上がる工事コストへの補正や、地域ごとの給与差補正といったものも含まれます。

以下、総務省「平成30年度市町村別決算状況調」に基づき、全国1,718市町村に関する財政力指数の概要を見ていきます。

※東京23区は通常の市町村と税源が異なるためここでは除きます。

全国1,718市町村の財政力指数の平均は

0.51

なお、中央値は0.45となります。

市町村別に財政力指数を出すとこうなります。

市の平均0.64(792市)
町の平均0.42(743町)
村の平均0.32(183村)

財政力指数が1以上の市町村の数は

83(49市27町7村;全市町村の4.8%)

これらの市町村では、3年平均で基準財政収入額が基準財政需要額を上回ったということになります。

基準財政収入額の全市町村合計は

16兆2,715億円(1,718市町村)

人口1人当たり基準財政収入額は

137,944円

平成31年1月1日現在の住民基本台帳人口に基づき、上記基準財政収入額を全市町村の合計人口1億1,795万6,945人で割ると上記の数値になります。

1人当たり基準財政収入額の全市町村平均は

126,520円

一方、1人当たり基準財政収入額を市町村ごとに出し、それを1,718市町村で平均すると126,520円となり、全国の1人当たり基準財政収入額より1万円程度小さくなります。

全市町村平均は全国で均した値より1割弱小さくなっています。このことは、一部の市町村の基準財政収入額が突出して高いことを示していると考えられます。

基準財政需要額の全市町村合計は

22兆7,961億円(1,718市町村)

上の基準財政需要額の合計を基準財政収入額の合計で割ると0.71になります。

現状の市町村境界によるさまざまな補正があるので一概には言えませんが、もし全国すべての市町村を1つにまとめた場合の財政力指数は0.71近くになるといえます。

人口1人当たり基準財政需要額は

193,258円

全市町村の合計人口1億1,795万6,945人で割ると、1人当たり193,258円となります。

1人当たり基準財政需要額の全市町村平均は

328,684円

全市町村平均は全国で均した値より1.7倍高くなります。

基準財政収入額におけるこの差は1割程度なので、基準財政収入額よりも基準財政需要額のほうが地域のバラツキが大きくなっていることが明らかになります。

おわりに

市町村の財政力指数格差は収入よりも支出において大きいと言えます。また、「基準財政需要額」は各市町村の予算使途によらない一律の基準であるため、この格差は何らかの無駄遣いによって発生しているわけではありません。

続いて、どの程度のバラツキがあるかを明らかにするために、「基準財政需要額」の地域差を見ていきます。

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