日本の年間相続税額は
2兆3,333億円(平成30年度決算額)
この額は、国税と地方税を合わせた平成30度決算額(104兆9,755億円)の2.2%に当たります。
相続税は所得税、法人税、消費税よりは小さいですが、固定資産税(8兆9,958億円)の約1/4、たばこ税や酒税、自動車所得税より大きい重要な税目になっています。
ここからは、相続税申告・課税状況に基づき、どのような相続によってこの税額が生まれるのかを見ていきたいと思います。
以下の数値は国税庁統計年報「相続税」によります。平成30年中に相続が開始され、令和元年10月31日までに申告・処理された人や金額についての統計であるため、上記の決算額とは時期的な差異があります。
相続税の対象となる課税価格の合計は
16兆2,640億円
※過年度分を含まない金額です。
上記は、取得財産価額(17兆3480億円)から葬式費用を含む債務等(1兆4,403億円)を控除した金額になります。
ここから案件ごとの相続規模や相続者の属性に応じて税率が掛けられ、各種控除を引いたうえで国の相続税収入となります。
課税対象財産に占める土地の割合は
35.1%(6兆818億円)
相続財産のうち最も多いのは土地で、債務以外の課税対象財産の3分の1強を占めています。
土地の75%は宅地(借地権含む)で、残りが田畑や山林、その他の土地となります。土地とは別に計上される「家屋、構築物」も9,417億円あります。
土地と建物で相続財産全体の半分近くになることがわかります。
次いで多いのは現金・預貯金等(5兆5,890億円;32.2%)、有価証券(2兆7,733億円;16.0%)です。事業(農業含む)用財産も相続対象になりますが、その額は6,955億円(0.4%)と小さいです。
平成30年分で課税対象となった被相続人の数は
116,341人
上記は実際に課税された被相続人の数です。同時期の相続税申告人数149,481人のうち、78%にあたる116,341人に課税されています。
日本の年間死亡者数は136万2,470人(平成30年)です。生前相続などのケースもありますが、死亡者のうち相続税課税対象であるのは多く見積もっても1割程度であることがわかります。
残り9割の死亡者に相続税が発生しないのは、財産が相続税発生基準未満、贈与等ですでに処分済み、相続者が存在しない、などの理由とみられます。
課税価格で見たとき最も被相続人数の多い層は
5千万円超1億円以下
(58,950人;課税対象被相続人の50.7%)
他の多くの統計と違い、「以上/未満」ではなく「超/以下」になりますのでご注意ください。
課税価格とは、「相続税の対象となる財産額」のことです。上記のように、実際に課税された被相続人数では「5千万円超1億円以下」の層が約半数を占めます。
5千万円超では基本的に課税価格が高くなるほど被相続人の数は少なくなり、「1億円超2億円以下」32,399人、「7億円超10億円以下」872人(1.6%)、最も高い「100億円超」で13人となります。
基礎控除額(3,000万円+相続人数×600万円)や配偶者の税額軽減分が大きいため、特に相続額の比較的小さい層では、実際の財産に対して課税される金額が名目上の相続税率(10%~55%)より小さくなっています。
この「課税価格5千万円~1億円」の層でも、課税価格の合計(4兆1,850億円)にたいする納付税額は1,484億円となり、ここからわかる最終的な税率は3.5%となります。
一方、ほぼ確実に最高税率(55%)であると考えられる課税価格50億円超の層(被相続人数46人)は、課税価額の合計5,478億円に対して1,954億円(35.7%)の課税額となり、5千万円~1億円の層が支払う税率の約10倍となります。各種控除によって、名目税率よりも累進性が強まっていると言えます。
実際に相続税を負担する相続人の数は
299,076人
配偶者控除などで「相続財産はあるが相続分に係る税は0円となった」人は上記に含まれません。
「課税価格のある相続人数」は300,241人です。相続全体には課税されていても、約1,000人の相続分については無税となっていることがわかります。
「2割加算額」のある相続人の割合は
13.9%(41,505人)
被相続人の兄弟や孫、または養子など、配偶者や1親等の血族以外の人が相続人になる場合はその相続分に係る税金が2割増しになります。約6人に1人程度の相続人はここに含まれます。
被相続人1人あたりの平均相続人数は
2.58人(※課税価格のある300,241人に対して)
相続人数300,214人を被相続人数116,341人で割ると2.58人となります。
法定相続人数が0人である相続の割合
0.5%(560例)
法定相続人とは、民法で決められた配偶者、子ども、両親、孫(子供がすでに死亡している場合)などの直系親族を指します。
内縁の妻、いとこ、叔父叔母などは法定相続人に含まれませんが、遺言によって相続させることができます。子供がいる場合の孫や、親が存命の場合の兄弟なども法定相続人にはならないため、別途指示が必要になります。
1人の被相続人に対して法定相続人が10人を超えるケースも320ある一方で、法定相続人が0人である場合も560例あります。